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インタビュー田沢 一晃さん

Q
瓶を使ったキノコの菌床栽培を
やっているのは、田沢さんを含めて
市内に2件しかないんですよね?

そうですね。もっと言うと、うちは冷房設備を入れずに自然の温度・湿度での自然栽培をしていますので、かなり珍しいと思います。栽培方法を簡単に説明しますと、専用の瓶に独自配合のおがくずとひらたけ菌を入れ、まずは芽出し。その後、培養を重ねていき、収穫できる状態まで育てていくという感じです。大変なのは温度や湿度の管理。浜松は乾燥や強い風がネックになるので、つねに目を光らせています。こだわりは有機肥料ですかね。この肥料を入れると入れないのとでは、味が全然違いますから。

Q
ひらたけって、キノコの中で
最も栽培日数が短いと聞いたことがあります。

瓶に菌を入れてからだいたい40日くらいで収穫できます。椎茸なんかは培養日数(おかくずの中に菌をまわす日数)だけでも150〜180日かかるそうなのでかなり短いですね。前述したように、私は自然栽培で育てているので、できるだけリスクを減らすためにも、ひらたけ栽培を選びました。とは言え、菌という“生き物”を扱う仕事ですので簡単ではありませんけどね。ひらたけの菌は比較的雑菌に強い方なのですが、それでも人間の手などに付着している菌や風などで運ばれてく自然界の菌につねに気を配らなくてはいけません。キノコの生産農家は「納豆を食べない」という話を聞いたことがありますか? 納豆の菌って最強なので、そんなのがキノコの生産現場に入ったらすぐに全滅してしまうんですよ。

Q
田沢さんがつくるひらたけの
特徴をあげるとすると何でしょうか?
私が食べた印象は
「甘みがすごく強い」なのですが

確か、宮本さんは天ぷらでいただきましたよね。ひらたけは熱を通すと甘みがグンと増すので、そう感じたのかも知れません。一言で特徴をあげるとするなら、万能キノコ。汁物、炒め物、揚げ物…と何に入れてもおいしいと思います。石ずきのまま食べられますし、椎茸や舞茸のように主張し過ぎることがないので使いやすいと思います。淡白な味わいとコリコリッとした食感を楽しんでいただきたいですね。ひらたけって一般的にはまだまだマイナーなキノコじゃないですか。「どうやって食べるの?」と聞かれることもよくありますし。これは切実な願いなのですが、何かのきっかけで「ひらたけブーム」みたいなのがきてほしいなって思います(笑)。

Q
以前お話いただいた「キノコカレーの話」をもう一度お願いできませんか?
あの話、大好きなんです(笑)

わかりました(笑)。ある時、某有名カレーチェーン店に食事に行ったときのことです。メニューを見ると「キノコカレー」があったので、勉強ついでに注文しました。「どんなキノコを使っているんだろう? 安く出回っているしめじとかかな」と予想していると、しばらくしてカレーが登場。食べてみると…なんとひらたけが使われているんです。「えっ!? なんで?」ってびっくりして、いてもたってもいられなくなり、カレーチェーン店を運営する会社の広報の方に問い合わせてみました。「なぜひらたけなんですか?」って。返ってきた答えにまたびっくりしましたよ。「いや、単純においしいからですけど」って(笑)。それを聞いた瞬間、ビビッ!ときたんですよね。急にひらたけの生産者として誇りが出てきたというか、「もっともっと多くの人にひらたけを知ってもらいたい!」という使命感みたいなものが湧き出てきた感じです。先ほど「ひらたけブームがきてほしいな」なんて言いましたけど、いやいや、私がブームを作っていかなければいけないんですよね。そうなるように、おとなりさんちと協力してがんばっていこうと思います!

田沢 一晃

就農10年目。浜松では珍しいひらたけの生産農家。薄暗い栽培ハウスに足を踏み入れると、冷房設備などを使わない自然に近い環境が維持され、キャビネットには専用の栽培瓶がびっしり。田沢さんはここで、“万能キノコ”でありながら一般の認知度が低いとされるひらたけの可能性を日々追求し続けている。おとなりさんちとともに目指すのは「いかにして“ひらたけブーム”を作り出していくか?」だ。